肘が痛い時に考えられる疾患5選【チェック方法あり】
最終更新日 2021/09/28
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
最近、スポーツをやっているときになんか肘が痛いなぁ。
なかなか治らなくなってきているし、日常生活でも痛くなってきた。原因は何なんだろう?改善できる方法はあるかな?
今回は、そのような方のために肘が痛い時に考えられる疾患5選について、お話ししていきます。
肘が痛い時に考えられる疾患5選 もくじ
・肘が痛くなるとは?
肘が痛くなるには、様々な原因があります。スポーツや日常生活での繰り返しの負担が原因になり、筋肉や関節に負荷がかかり、痛みが出現することで肘の痛みは発症します。痛みが出やすい原因は、筋肉の付着部や軟骨の損傷だったりします。しばらく安静にしていれば、痛みは軽減していくものもありますが、根本的な負担のかかる動作や日々の動作のクセを修正しなければ根本的な改善にはつながらないこともあります。
・野球肘
野球肘とは俗称で、手を使うスポーツ(野球やテニス、ボーリングなど)や、手を使う職業(工具をよく使用する職業、重たいものを持つ職業)の方にも多く発症します。野球肘の正式な名前は、上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)と言われています。
ちょうど肘の内側の出っ張りあたりが痛くなることが特徴です。
上腕骨内側上顆には、手首を曲げる橈側手根屈筋、尺側手根屈筋や、手指を曲げる長掌筋、手のひらを下に向けるための円回内筋が付着しています。これらの筋肉の働き方を見てみると、野球だけでなく、意外と仕事でも使う動作が多いことに気づくと思います。日常生活では、強い握力を出した時に痛みが出ることもあれば、症状が強く、安静にしていても、痛みが出るようになってしまう場合もあります。
投球動作に着目してみると、肘の内側には伸張ストレス(伸ばされるストレス)、肘の外側には圧迫ストレス(つぶされるストレス)がかかります。特に、肘の外側が圧迫されてしまうと、軟骨の損傷が起きることもあります。もし、軟骨の損傷が起きた場合は、しばらく投球動作など、肘に負担がかかるような動作ができなくなりますので、痛みが出た場合早めに原因を特定し対処することが肝心です。
・チェック方法
では、どのように野球肘かチェックすれば良いのでしょうか?チェック方法について解説していきます。
・手首に負担をかけるテスト
1. 検査を受ける人は、握り拳を作り、しっかりと手首を曲げておきます。
2. 検査をする人は、曲げられた手首をしっかりと引っ張ります。
3. 肘の内側の痛みがでるようであれば陽性と判断します。
・テニス肘
テニス肘も野球肘と同様に俗称で、正式名称は上腕骨外側上顆炎といいます。この上腕骨外側上顆には、手首を起こす作用のある長・短橈側手根伸筋や手指を伸ばすための総指伸筋がくっついています。そのため、掌を下に向けたままものを持ったり、指を伸ばしたりすると肘の外側に痛みが出ることが特徴です。
テニスだけでなく、バドミントンなどのラケット競技選手や、工具を多く使用する職業の方にも見られる症状です。
手首を起こしたり、指を伸ばしたりすることで症状が出るテニス肘ですが、予防のためにはしっかりと「握る」ことが重要とされています。物を握る時には、中指〜小指にかけての握りが特に重要とされています。
下記の文献では、しっかりと握ることの重要性や、長橈手根伸筋の重要性について述べられています。
参考情報:長橈側手根伸筋の機能に着目し運動療法を実施した上腕骨外側上顆炎の一症例≫≫
中指〜小指にかけてしっかりと握ることと、長橈側手根伸筋の収縮が同時に起こることにより、手首の固定性が上がります。そうすることにより、出力の弱い短橈側手根伸筋への負担が減り、肘の痛みが出る可能性が減少します。
・チェック方法
テニス肘のチェック方法について解説していきます。
複数のチェック方法がありますが、どれも手首を起こす、指を伸ばす筋肉に負担をかける検査となっています。
・Chair テスト
1. 椅子を持ちます。
2. 肘の外側に痛みが出れば陽性です。
文字通り椅子を持ち上げるテストになります。手首を起こす筋肉に負担をかけることが目的なので、椅子でなくても他の物で代用しても大丈夫です。余談ですが、「Chairテスト」という名前そのままのテストなので、名前の付け方が面白いですよね。
・Thomsenテスト
1. 検査を受ける人は手首をしっかりと起こしておきます。
2. 検査者は、手首を曲げるように抵抗をかけます。
3. 肘の外側に痛みが出れば陽性と判断します。
・中指伸展テスト
1. 検査を受ける人は、しっかりと指を伸ばしておきます。
2. 検査者は伸ばされた中指を押して抵抗をかけます。
3. 肘の外側に痛みが出れば陽性です。
・肘部管症候群
肘部管症候群とは、肘の内側を通る尺骨神経が伸ばされてしまったり、何らかの影響で圧迫を受けたりすることで神経の麻痺(尺骨神経麻痺)が起きる疾患のことを言います。
尺骨神経麻痺が起きると、肘から先の前腕部分小指側や、小指・薬指に痺れが出たり、指の間の筋肉、親指周り、小指周りの肉球の筋肉に力が入りにくくなったりしてきます。症状がひどくなると、これらの筋肉が痩せてきてしまいます。
症状が長期化すると、なかなか治りにくくなってきてしまいます。もともと外反肘のように、肘の内側が伸ばされやすいストレスがかかりやすい人は、症状が出てしまうと治りにくいとされています。これらのことは下記の文献で指摘されています。
重症化を防ぐポイントとしては、筋肉が痩せ細る前に、痺れが出た時点で専門家に相談して、早めに対応することが大切になります。
・チェック方法
肘部管症候群のチェック方法を解説していきます。肘部管症候群では、尺骨神経麻痺が起きているかどうかが重要な所見になります。そのため、尺骨神経麻痺があるかどうかを確認していきます。上記で解説している痺れや、筋肉の痩せ方をチェックすることは重要ですが、それ以外にもチェック方法があります。
・フローマンサイン
1. 両手の親指と人差し指の側面で、紙を挟みます。
2. そのまま紙を引っ張ります。
3. 親指を閉じておく力がないため、第1関節が曲がってきます。
4. 第1関節が曲がると陽性と判断します。
・変形性肘関節症
肘の関節に変形が生じ、食事が困難になったり、顔を洗えなくなったり、日常生活に支障が出るようになってきます。また、肘の関節内に骨のかけら(いわゆるネズミ)が生じ、それが関節に挟まって、ロッキングが出現してしまうこともあります。
病態としては、肘の内側には過剰に形成された骨棘が形成されます。肘の外側は、軟骨の摩耗が見られます。いずれも、長年の歳月をかけて肘に負担がかかり炎症が起きたり治ったりを繰り返して、最終的に変形に至る場合が多いです。
下記の文献では、変形性肘関節症の手術中の所見が記載されています。また、肘の軟骨が摩耗する原因としても、重労働が挙げられています。症例として紹介されている方の職業も、農業や石工など、重量物を扱う仕事が中心になっています。
・チェック方法
変形性肘関節症は、自宅でできるチェック方法はありません。過去に肘に負担がかかるスポーツや仕事を行っていたり、肘のロッキングの経験があったりするかどうかなどの所見で、変形性肘関節症を疑います。レントゲンを撮影することで、確定診断となります。レントゲンでは、肘の骨の周りに骨棘が形成されるため、モヤモヤする感じに画像が写ります。
・肘内障
手を引っ張られたことにより、肘の外側の関節(近位橈尺関節)の脱臼が生じることを言います。5歳以下の子供に見られるとされています。脱臼が生じた場合は、整復します。整復が終了した後には、通常の生活に戻っても良いとされています。
・チェック方法
肘内障のチェック方法は、レントゲンを使用します。肘内障だと思っていたら、骨折だったということがないようにしたいですね。子供が肘を痛がっており、あまり動かしていないようであれば、レントゲン撮影をしていただき骨折の有無を確認することが必要です。
・まとめ
今回は、肘が痛い時に考えられる疾患5選ということで解説してきました。
野球肘は、肘の内側にある筋肉に負担がかかることが原因で、痛みが出現します。手首を曲げる方向に負担がかかると、痛みが確認できます。
テニス肘は、肘の外側にある筋肉に負担がかかることによって、痛みが出現します。手首を起こす筋肉に負担をかけることによって、痛みを確認できます。Chairテストがユニークな名前なので、覚えやすいと思います。
肘部管症候群では、肘の内側を通る尺骨神経の麻痺が出るかどうかが重要になります。もし痺れや、筋肉が痩せてくるようでしたら、早めに専門家への相談が必要になってきます。
肘内障は子供に起きやすく、近位橈尺関節の脱臼が生じる病態でした。整復することにより治りますが、骨折を伴っていないかどうか、確認が必要になります。
肘は日常生活やスポーツなど、あらゆる場面で使用する関節です。動きに制限が出てしまわないように、症状が出たら早めに対処していきましょう。