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幼小児に多い肘の脱臼!肘内障の病態と治療法を解説

最終更新日 2023/2/1
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修

お子さんがいきなり肘に痛みを訴え、腕を下げたままで動かさないことありませんでしたか?
それは、もしかしたら「肘内障」かもしれません。
肘内障は、乳児頃から5歳頃までに見られますが、特に2歳から4歳頃の子どもによく起こる肘の外傷です。手を強く引っ張ることで肘が脱臼し痛みが生じます
お子さんの訴えに耳を向け、専門家へ早めに相談するようにしましょう。
今回は、「肘内障」の病態や治療法などを解説していきます。

幼小児に多い肘の脱臼!肘内障の病態と治療法を解説 もくじ

・肘内障とは?

・発生原因

・症状

・診断

・治療方法

・まとめ

肘内障とは?

肘内障とは、肘関節を構成する骨と靭帯が大きく関わっています。
まずは肘の解剖から解説していきます。

・肘の解剖

肘関節は、3つの骨によって構成されています。
上腕に存在する「上腕骨」、前腕に存在する「橈骨」と「尺骨」、これら3つの骨に加え、靭帯や関節包によって肘は安定して運動をすることができます。

尺骨はフックのような形をしており、上腕骨の凹みにはまり込んでいます。フックと凹みの部分がかみ合うことで、肘関節を伸ばしたり曲げたりすることができます。左右にずれるとかみ合わなくなってしまうため、上腕骨と尺骨は左右にずれることがないよう、しっかりと靱帯で固定されています。
一方で、橈骨は上腕骨とかみ合うことなく、浮いた状態に位置しています。そのため、「輪状靭帯」という靭帯が輪っかのように橈骨と尺骨を固定しているのです。
橈骨は尺骨よりも自由度が高いため、前腕の回旋運動に働きます。
これにより、橈骨は輪状靱帯の中でスムーズに回転することができます。
つまり、肘関節内では尺骨が上腕骨に対して曲げ伸ばしがしやすいように固定され、一方の橈骨は前腕をくるくる回しやすいように尺骨から靱帯で支えられた構造をしているのです。
そして、肘内障というのは、なんらかの外傷により橈骨の先端である、橈骨頭が輪状靱帯から亜脱臼するために起こります。それにより、痛みとともに腕を動かせなくなってしまうのです。

発生原因

肘関節内で橈骨が輪状靱帯から抜けてしまう場面を紹介していきます。

・子どもの発達

輪状靱帯は、年齢を重ねるにつれてだんだんと強固になり、ちょっとやそっとでは緩むことはなくなります。一方、子どもの靭帯はまだ弱く、安定性が低いため強い衝撃が加わると靭帯から骨が逸脱してしまったり、筋肉を傷つけてしまったりする可能性が高いのです。
そのため肘内障を起こすほとんどが、靱帯が弱く橈骨の構造が未熟である子どもになります。

・手を引っ張られる

肘内障を起こす最も多い原因が、子どもの手を引っ張ったときです。例えば、子どもが走り出そうとしたときに手を持って静止した場合など、強い力で肘関節が引っ張られたことで橈骨頭が脱臼してしまいます。

・転倒

手を引っ張ったときに比べると、転倒によって肘内障を発症したケースはさほど多くありません。転倒したときに何かをつかみ、そのまま倒れ込んだときに、自分の体重で肘が引っ張られてしまい肘内障を発症する場合や、転倒したときに親指側を下に転倒して、橈骨に無理な力がかかった際などに発症する場合があります。
特に後者の場合は、肘関節以外の部分の打撲によって、骨折などの合併が起こる事もあるため、肘内障だけだと思って後述する整復処置を行うと思わぬ合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。

症状

肘内障で生じる症状について紹介します。

・肘の痛み

子どもが肘の痛みを訴えたことで発覚することが多いです。
橈骨頭が輪状靭帯から脱臼すると、骨とその他の組織の間に靱帯が挟まれるため、痛みを感じます。特に動かすと痛みが強くなるため、言葉でうまく表現できない子どもは手を動かさず、泣いているだけと言う事も多くあります。
また、子どもの場合は肘が痛いとはっきりと分からない事が多く、しっかりと言葉で説明できる子も「手が痛い」と訴える事が多いため、はじめから肘が原因と気づきにくいことが多々あります。

・肘の脱臼感

肘内障は、橈骨を抑える靱帯がずれてしまって支えが弱くなっているため、脱臼したように肘関節の安定感が失われる感覚があります。
見た目としても、肘関節の橈骨頭の部分がずれてしまい、肘関節が変形しているように見える場合もあります。

・感覚障害や骨折の合併

強い衝撃で橈骨頭が脱臼したことで、肘関節周囲の神経を損傷し、感覚障害を引き起こす可能性があります。子どもなので症状を聴取することは難しいですが、「ビリビリする」「触っても感じにくい」などと、神経障害を確認することが必要です。
また、肘をぶつけた場合は骨折を合併し、それに伴う神経障害の可能性も考えられるため、注意が必要です。
子どもの肘の訴えで肘内障と判断してしまう場合もありますが、肘関節周囲の骨折の可能性も否定できません。自己判断で肘内障と思って整復法を試すと、実は骨折が起こっていたという場合に、二次障害として神経障害を起こす可能性も考えられるため注意しましょう。

診断

肘内障と診断する判断材料を紹介していきます。

・骨折との違い

肘内障と骨折の違いを知っておきましょう。
骨折とは、骨自体にひびが入ったり、折れたりする事を指します。医学的には、骨の表面にある骨膜の連続性が断裂した状態とされます。
一方で肘内障は、骨自体には全く損傷が無い状態で、靱帯がずれた状態です。
骨折の場合は肘周囲が腫れあがったり、皮下出血を起こしたりするため、肘内障と診断するにはまず骨折がないことを確認する必要があります。

・親御さんへの聴取

肘内障は、どのような状態で症状が出たかを聴取することが最も重要です。
お子さんの腕を引っ張ったりしなかったか、転倒しなかったかなど、痛みが起こった原因を聴取する必要があります。

・視診・触診

受傷機転を聴取してから、子どもが訴える痛みの場所を確認します。子どもの場合は、手が痛いと言うだけで肘が痛いと分からない事も多いので、腕全体をみるようにしましょう。
肘内障の場合は橈骨頭が輪状靭帯からずれているだけのため、肘が腫れあがっていたり、皮下出血を起こしていたりすることはほとんどありません。
そのため、腫れや皮下出血が強い場合は、骨折や靱帯の損傷が起こっている可能性が考えられます。
骨折があれば触っただけで痛がり、痛い部分から離れた場所を叩くと、痛い場所に響く所見がありますが、肘内障の場合はそういったことはありません。

・X線検査(レントゲン検査)

受傷機転や身体所見から、肘内障でほぼ間違いないと思われる場合でも、初回の場合はレントゲン検査を行う事がほとんどです。2回目以降は靱帯が緩んでいて再発の可能性が高く、症状も以前と同じという訴えをすることが多いため、肘内障であると言う事はほぼ間違いなく診断できます。
しかし、初回の場合は肘内障以外の外傷が隠れている場合も多く、さらに靱帯が緩んでいない状態で受傷しているため、骨への負担も大きくなり骨折を合併する場合が多くあります。
レントゲン検査で特に骨に異常が無ければ、受傷機転と併せて肘内障であると診断します。

治療方法

肘内障の治療方法について紹介します。

・局所安静

肘内障を起こしたら医療機関に行くのが第一選択ですが、医療機関に行くまでの間は安静が絶対です。
痛みが強くならないようにする意味もありますが、肘内障の場合、整復前に手を無理に動かすと靱帯が余計に引っ張られ、損傷が激しくなることがあります。
そのため、肘内障を疑う場合は整復を行う以外には安静にする事が重要です。

・肘内障整復法

肘内障は手術などを必要とせず、手を動かすことで整復する事ができます。
肘内障を起こしている側の手のひらを上に向けて、橈骨頭を抑えながら反対側の手で肘をぐっと曲げると、「コキッ」という感触とともに整復されます。
もしくは、肘を目線の高さまで持ち上げて、手のひらを下に回した状態で、同じように橈骨頭を抑えながら、親指を下に回すように動かすと、「コキッ」という感触とともに整復されます。
整復をすると、すぐに症状が治まる事がほとんどです。
しかし、受傷時に炎症を起こしていている場合もあるため、整復後すぐは安静にするようにしましょう。

・親御さんの認識

肘内障は、再発が起こりやすい疾患です。
肘内障は、もともと輪状靱帯が抜けやすい状態であったために発症しますが、一度脱臼をすると輪状靱帯が緩んでしまい、さらに抜けやすい状態になっています。
そのため、一度肘内障を起こした子どもは、再発しないように手を引っ張る負担はかけないように気をつける必要があります。

まとめ

今回は、幼少児に発症しやすい肘の怪我「肘内障」について詳しくご紹介してきました。
肘内障は、靱帯が緩んでずれてしまう外傷です。他の外傷が合併していないか慎重に診断したら、簡単な手技で整復が可能です。
子どもの手を引っ張ると発症する事が多いため、普段から手はあまり引っ張らないように気をつける必要があります。特に一度でも発症した場合は更に注意が必要です。
子どもが肘に痛みを訴えていたら早めに接骨院などの医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

参考文献
糸満 盛憲 他:整形外科学 p131~132,P368 2016
中村利孝他:標準整形外科学 p451~452 2017
高橋正明 他:STEP 整形外科p225 2005
日本整形外科「肘内障」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/pulled_elbow.html
Medical Note「肘内障」
https://medicalnote.jp/diseases/%E8%82%98%E5%86%85%E9%9A%9C?utm_campaign=%E8%82%98%E5%86%85%E9%9A%9C&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo