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手首を回した時の痛みに注意!TFCC損傷の病態と治療法を解説

最終更新日 2022/10/7
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修

手首の運動を行った際に痛みが生じた経験はありませんか?その痛みの原因は「TFCC損傷」かもしれません。
病名を聞いたことがあると言う人は少ないかもしれませんが、実は多くの人が知らず知らずのうちに損傷している可能性があります。
重症化したものは手術が必要になることもあるので、我慢せず接骨院などの医療機関に相談するようにしましょう。
本日は「TFCC損傷」の病態や治療法などを解説していきます。

手首を回した時の痛みに注意!TFCC損傷の病態と治療法を解説 もくじ

・TFCCってなに?

・TFCC損傷とは?

・発生原因

・TFCC損傷の症状

・診断

・治療方法

・まとめ

TFCCってなに?

TFCCとは、三角線維軟骨複合体(Triangular Fibro Cartilage Complex)の略で、小指側の手首にある構造物です。もともと腕には尺骨と橈骨という二本の骨があります。この2本の骨がうまく組み合わさることで、人は表、裏に手をひっくり反す動きができるのです。
そして、手首の部分でその二本の骨を結びつけているのが「TFCC」なのです。
TFCCは単一の構造物ではなく、靱帯や腱、軟骨からなっています。この複合体が二本の骨を結びつけることで、人はスムーズに手首を動かすことができます。

TFCC損傷とは?

TFCC損傷というのは、TFCCがダメージを受ける事で痛みを感じる疾患です。
ほとんどの場合は転倒などの外傷によって損傷が引き起こされます。ほかにも、何かしらの要因で手首に負荷がかかったり、加齢によりダメージが蓄積したりして炎症が起こり、痛みを感じます。

発生原因

TFCC損傷の発生原因について紹介していきます。

・手首に負荷のかかるスポーツ・仕事

手首を繰り返し動かすような動作はTFCCに負荷がかかるため、容易にTFCC損傷を引き起こします。具体的には野球、テニス、ゴルフの様なスポーツや、繰り返しドライバーを回すような仕事、手や指をよく使うデスクワークで引き起こされます。近年では長い時間スマートフォンをもって操作することで手首に負担がかかり、発症する人が出てきています。

・転倒による骨折

転倒し手をつくことで、手首を骨折することがあります。もちろん、骨折したときや骨折が治癒している経過中は、手首を動かすことで痛みを感じます。しかし、骨折は明らかに治っているのに痛みが継続する場合は、TFCC損傷を合併している可能性が考えられます。
転倒などの外傷によるものは、骨だけでなく周囲組織の状態も把握する必要があります。

・加齢(もしくは先天的な解剖学的異常)による手首の変形

加齢に伴い、だんだんと手首の形状が変化してくると骨の長さが変わってきたり、骨の位置関係に変化が起こってきたりする場合があります。この際に、橈骨と尺骨の位置関係が離れてしまい、付着しているTFCCが引き延ばされて損傷を起こします。また、先天的に尺骨が橈骨よりも長い場合があり、このような場合にもTFCCが引き延ばされやすく、損傷を起こしやすくなります。

TFCC損傷の症状

TFCC損傷で生じる症状について紹介します。

・手首の小指側に痛みが出る

最も多く、そして初期から見られる症状が痛みです。特に、TFCCが存在する、手首の小指側に痛みを感じます。症状が軽度であれば安静時には症状を感じず、ドアノブを回したり雑巾を絞ったりするような、手首を回す運動をしたときに痛みを感じます。重症化してくると、少し手首を動かしただけで痛みを感じたり、安静にしていても痛みを感じたりするようになります。

・手首の不安感

TFCC損傷では、TFCCが痛んで引き延ばされることで、尺骨と橈骨の支えが弱まっていることがあります。そのため、手首を動かそうとしたときに手が抜けそうな感覚を感じる事があります。

・手首の関節可動域制限

TFCCが損傷を受けたあとは、組織を修復しようと炎症反応が起こります。炎症反応が起こると、組織は傷痕(瘢痕)として硬くなっていきます。そのため、TFCC損傷の初期にはあまり起こりませんが、損傷後時間が経過すると関節の可動域に制限が生じる場合があります。

診断

TFCC損傷と診断する判断材料を紹介していきます。

・尺骨小窩部の圧痛

身体所見でよく見られるのは、TFCCが存在する尺骨小窩部(手首の小指側の背面)の圧痛です。動かすと痛みが出る場所を押さえることで痛みが起こります。

・DRUJ不安定性検査

DRUJとは、遠位橈尺関節の略です。橈骨と尺骨が接する関節のうち遠位、すなわち手首にある関節の事を指します。TFCCはDRUJの中にある構造体です。DRUJ不安定性検査とは、検査をされる人の手首の尺骨と橈骨を、検査する人がそれぞれ左右別の手で持ち、すりあわせるように動かして所見を見ます。この際に痛みが出たり、大きくずれたり、コリコリと音がなったりする場合に陽性と判断します。

・TFCCストレステスト

TFCCストレステストとは、手首を小指側に傾けた状態で、手を肘の方にむけて押します。その際に手首に痛みが生じたら陽性です。

・Piano key sign

検査を行う人が検査をされる人の手を片手でつかみ、もう片方の手で尺骨頭を手背側から手掌側に押すことで、可動性を見ます。
この際に尺骨がぐらぐらと動いたら陽性です。

・エコー検査(超音波検査)

TFCC損傷に対する超音波検査は、まだ確立された主義とは言えませんが、動かした際のTFCC周辺の可動性や柔軟性をみるのに有用な検査と言われています。具体的にいうと、TFCC損傷が起こるとTFCC自体が腫れたり、固くなったりします。そのため、手を動かしながら超音波でTFCCを観察すると通常より分厚かったり、動きが鈍かったりなどの動態をみることができます。

・X線検査(レントゲン検査)

レントゲン検査ではTFCCを直接観察することができません。しかし、尺骨と橈骨の位置関係のズレがTFCC損傷を引き起こすため、レントゲン検査で骨の位置関係を評価することができます。

・MRI(核磁気共鳴映像法)

MRIはレントゲン検査と違い、靱帯や軟骨などの組織の状態も観察することができます。それだけでなく、浮腫や出血など損傷が起こった箇所を見つけることができます。

治療方法

次にTFCC損傷に対しての治療方法を紹介します。
基本的にはTFCC損傷は組織が損傷し、損傷を修復するために炎症反応が起こっているため、炎症を抑えることが第一選択になります。

・局所安静

炎症が起こっている場合、最も重要な治療法は安静にする事です。炎症が起こっている部位を動かすと、炎症がより悪化したり、場合によっては損傷がさらに広がったりしてしまいます。そのため、まずは手首の安静が第一選択です。
発症早期であれば、冷却することでより炎症を落ち着かせることができます。
仕事や日々の生活を調整し、手首にかかる負担を減らすようにしましょう。

・テーピング・装具

テーピングや手首を固定する装具を使用する事は、局所安静をより確実なものにします。無意識に手首を動かしてしまうことを防ぐことで、TFCC損傷の悪化を防ぎます。

・マッサージ・ストレッチ

手首は非常に多くの筋肉、靱帯によって固定されています。TFCC損傷は、手首を酷使して発症することが多いため、手首の運動に働く筋肉が硬くなっていることが多いです。
筋肉が硬い状態で手首の運動を行うとTFCCの硬さに繋がってくるため、損傷が強くなる
恐れがあります。
そのため、硬くなってしまった手首周囲の筋肉をマッサージやストレッチで和らげていき、TFCCの負担を軽減させ修復を促します。

・薬物療法

薬物療法としては、炎症を抑える薬剤が用いられます。具体的にはロキソニン、ボルタレン、イブプロフェンなどの抗炎症作用をもった痛み止めを用います。しかし、薬物で炎症を押さえても根本の原因の改善にはつながりません。
薬物療法は補助的な治療と考え、リハビリなど他の治療と併用していくことが望ましいです。

・注射

痛みが強い場合は、局所に炎症を抑えるために注射を行う場合があります。
ステロイド注射を炎症部に投与し、炎症を抑えていきます。

・手術

TFCC損傷の治療は、基本的には安静です。しかし、2-3ヶ月の間、安静を基本とした保存療法を行っても症状が治まらない場合には、手術が選択される場合があります。
外傷や変形により尺骨と橈骨の位置が大きくずれている場合は、骨を短縮する手術が行われます。
また、関節鏡を利用してTFCCを縫合したり、部分的に切除したりすることで負担を減らして痛みを取るような手術も行われる場合があります。

まとめ

今回は、手首に負荷のかかる仕事やスポーツ、外傷によって起こるTFCC損傷について詳しく解説してきました。
手首の小指側を押さえたり、手首を動かしたりしたときに痛みを感じる場合に強く疑われます。
基本的には保存療法が第一選択ですが、重症なものに対しては手術を行う場合もあります。我慢せず早めに接骨院などの医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

参考文献
中村利孝他:標準整形外科学 p206p477,p484.
日本手外科学会「TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷」
http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/27TFCC.pdf
日本医事新報社:「三角線維軟骨複合体損傷(TFCC損傷)」
https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d150204/
「柔整ホットニュース」
https://www.jusei-news.com/gakujutsu/feature/2017/08/20170801_01.html
村岡 邦秀他:「スポーツによるTFCC損傷に対する鏡視下デブリードマンの治療成績」整形外科と災害外科 65:(4)700~702, 2016