手首の痛みの原因と改善方法
最終更新日 2021/06/22
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
日頃よく動かす手首。
そんな手首に痛みがでてしまうとつらいですよね。
手首を良く動かすスポーツや仕事をしている方、産後の女性など、近年ではスマホの普及により長時間使用していることで痛みがでる方も増えています。
そのほかにも、手をついたときに骨折をしたり、血行不良により骨壊死を起こし痛みがでる場合もあります。
手首の痛みを起こす原因はさまざまなものがあり、しっかりと見極めなくてはなりません。
なかには、早期治療をしていかないと手術をしなければ治らなくなってしまうものもあります。
ここでは、手首の痛みの原因と改善方法についてわかりやすくお話していきます。
手首の痛み もくじ
・ 手首の痛みの種類
・ 手首の痛みの原因
・ 手首の痛みの治療法
・ 手首の痛みの予防
・ 手首の痛みQ&A
手首の痛みの種類
<代表的な手首の痛み>
・ドケルバン腱鞘炎
・尺側手根伸筋炎
・TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷
・コーレス(橈骨遠位端部)骨折
・舟状骨骨折
・キーンベック病(舟状骨無腐性壊死)
<そのほかの手首の痛み>
・手根靱帯損傷
・変形性手関節症
手首の痛みの原因
<ドケルバン腱鞘炎>
特徴
・ものをつかむと痛む
・力を入れて握ると痛みが増す
・親指側の手首が腫れる
・だんだんと手首の動かしにくさがでてくる
・産後、中高年の女性に多い
・テニスなどの手首を使うスポーツに多い
原因
おもに親指の使い過ぎによって痛みを生じます。
親指側の手関節背側には腱鞘と呼ばれる腱が通るトンネルのようなものがあります。
この腱鞘には親指につく短母指屈筋腱と長母指外転筋腱が通ります。
親指の使い過ぎによって腱鞘がだんだんと厚くなっていき、トンネルが狭くなることで腱と腱鞘の間で摩擦し炎症が起こり、痛みを生じます。
また、女性は産後や加齢によって女性ホルモンの変化も原因となります。
女性ホルモンのエストロゲンが低下してしまうと腱のまわりにある滑膜が腫れ、腱鞘炎を起こしやすくしてしまいます。
<尺側手根伸筋炎>
特徴
・ものを持ち上げるときに痛む
・手首を回すと痛む
・手首を伸ばすとピキッと痛む
・小指側の手首が腫れる
・女性に多い
・テニスなどの手首を使うスポーツに多い
原因
おもに手首の使い過ぎによって痛みを生じます。
尺側手根伸筋腱は腕の内側にある尺骨の溝を通ります。
この溝は手関節外側付近の骨が出っ張っている尺骨頭という部分にあります。
普段、尺側手根伸筋腱は溝に収まっていますが、手首を回すことで溝をうまく滑り外れ動きを良くしています。
しかし、繰り返しの動作によって使い過ぎると摩擦し炎症が起こり、痛みを生じます。
また、稀に手首を回したときに腱が溝からうまく滑り外れない方がいます。
その場合は手首を回した際に腱に負荷がかかりやすく、炎症を起こしやすくなってしまいます。
<TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷>
特徴
・ものを持つときに痛む
・手首を回すと痛む
・手のひらを上にすると痛みが緩和される
・力が入りにくいことがある
・小指側の手首が腫れる
・男性に多い
・体操選手など手をつくスポーツに多い
原因
TFCCとは腕の2本の骨である橈骨と尺骨を結ぶ靱帯と尺側手根靱帯を結ぶ靱帯、腱や軟骨などの軟部組織を三角線維軟骨複合体といい、小指側の手首のくぼんでいるあたりにあります。
三角線維軟骨複合体を英語で
Triangular FibroCartilage Complex
といい、イニシャルをとってTFCCと呼ばれます。
このTFCCが転倒したり、交通事故の衝撃、繰り返し手をついたりすることによって炎症を起こし痛みを生じることがあります。
TFCC損傷はほとんど痛みがみられない方のほうが多いです。
では、なぜ痛みを生じる方がいるのかというと、その方にはTFCCの炎症部に異常な血管・神経が増えていることが原因になります。
これにより、手首を回したり、手をついたりすることで神経が圧迫され強い痛みを生じます。
手のひらを上にすることで、靱帯や腱の引き伸ばし、橈骨と尺骨のねじれがなくなることでTFCCに負荷がかからなくなり、痛みが緩和されます。
<コーレス(橈骨遠位端部)骨折>
特徴
・手首の痛み、腫れ
・フォーク状変形
・内出血
・中高年の女性に多い
・若年者はスポーツをしている方に多い
原因
多くは転倒時に手をついたときに手首が大きく背屈され、腕の外側にある橈骨が負荷に耐えきれなくなることで橈骨遠位端部が骨折します。
手首が大きく背屈されたことで骨折の遠位端が背側にずれ、腕から手先をみたときにフォークのような形になっていることからフォーク状変形と呼ばれます。
高齢者の場合は加齢により骨がもろくなり、骨粗しょう症になることがあります。
そのため、つまずいて手をつくだけでも骨折してしまうことがあります。
若年者の場合は骨が丈夫なため、橈骨が骨折するより手根骨である舟状骨を骨折することが多いです。
<舟状骨骨折>
特徴
・親指側の手首に痛み、腫れ
・偽関節になりやすい
・男性に多い
・若年者はスポーツをしている方に多い
原因
多くは転倒時に手首を大きく背屈されることで舟状骨骨折を起こします。
舟状骨骨折には結節部、遠位3分の1、腰部、近位部骨折があります。
最も多いのが腰部骨折で、舟状骨の腰部はくびれており、負荷が集中しやすいという特徴があります。
また、舟状骨は指先側から血流が流れているため、腰部骨折を起こしてしまうと骨折の近位端が血行不全になってしまい、偽関節を起こしやすくなります。
さらに舟状骨骨折は手首の捻挫と症状が似ているため、気づかずに放置していると偽関節になっていたという場合もあります。
偽関節になっても痛みはなくなりますが、ふとした動きで痛みを生じることがあります。
<キーンベック病(舟状骨無腐性壊死)>
特徴
・手首を動かすと痛む
・手首の腫れ
・手首の動きが悪くなる
・握力が低下してくる
原因
手首をよく使う仕事や日常の生活習慣で血行が悪くなってしまうと、舟状骨が血行不全を起こし骨壊死を起こしてしまいます。
骨壊死とは、骨に血流がうまく流れなくなり栄養が送れず、骨が死んでつぶれてしまうことです。
その結果、痛みがでたり、動きが悪くなってしまいます。
<手根靱帯損傷>
手首のすぐ下には8つの手根骨が2列になって並んで骨間には靱帯があります。
転倒時に手をついた衝撃などで靱帯を損傷したときに痛みを生じます。
一時的に腫れますが、大きく目立った腫れはほとんどでません。
<変形性手関節症>
手関節の変形があり、痛みや動きの悪さがでてきます。
過去に手関節骨折の経験があったり、大きく腫れがでたことがある方にみられることが多いです。
手首の痛みの治療法
<病院で行われる治療>
・ドケルバン腱鞘炎、尺側手根伸筋炎
ステロイド注射、痛み止め薬、サポーターによる保護を行うことで痛みの緩和を図ります。
症状が改善しない場合は、腱鞘を切開し腱の動きを良くする手術法があります。
尺側手根伸筋炎の場合は、腱が尺骨頭の溝から落ちないように腱鞘を作り直す手術法があります。
・TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷
損傷が軽度の場合は、サポーターで保護することで改善を図ります。
重度の場合は、異常にできてしまった血管を取り除いたり、断裂した靱帯を縫い合わせるする手術法があります。
・コーレス(橈骨遠位端部)骨折
骨折部を徒手整復し、約4週間ほどギプス固定をします。
骨折端のずれが大きく徒手整復できない場合は手術によって整復し、プレートを入れて固定する方法があります。
・舟状骨骨折、キーンベック病(舟状骨無腐性壊死)
軽度の場合は、サポーターの保護で改善を図ります。
舟状骨骨折で偽関節になっている場合は、血管が豊富な骨を舟状骨に移植し、骨の癒合を復活させる手術法があります。
キーンベック病の場合は、舟状骨に穴をあけ骨髄血を移植したり、月状骨の圧迫を軽減させる手術法などがあります。
<接骨院で行われる治療>
手首の痛みの予防
手首の痛みはほとんどが使い過ぎよって起こります。
予防に最も重要なことは手首を酷使しすぎないようにすることです。
スマホなど長時間使用する場合は両手で使ったり、仕事などでどうしても使わざるを得ない方はサポーターなどで手首の負担を減らしてあげることも大切です。
また、日頃からお風呂でしっかりと温めたり、ストレッチやマッサージのケアを行うことで予防することができます。
ここで、手首の痛みの予防、改善になるストレッチを2つご紹介していきます。
*痛みのない範囲で行ってください
<前腕前面のストレッチ>
・片方の手のひらを上にして肘を伸ばし、腕を前に出します
*手首に痛みがある場合は、肘を曲げて行ってください
・反対の手を上から指に当て、手前に引いていきます
これを10秒10セット行います。
<母指のストレッチ>
・片方の手のひらを上にします
・反対の手で下から親指をつかみ、手前に引いていきます
これを10秒3セット行っていきます。
ポイントは
母指球がしっかりと伸ばされているのを感じながら行いましょう。
手首の痛みQ&A
手首の痛みでセルフチェックできるものはありますか?
ドケルバン腱鞘炎はセルフチェックできる方法があります。
まず、手を親指が上にくるようにします。
親指を中に入れ、こぶしをつくります。
そのままこぶしを下に傾け、親指側の手首を伸ばします。
このときに痛みがでたら、ドケルバン腱鞘炎の可能性が高いです。
手首の痛みにはいろいろなものがありますが同時に起こることはありますか?
コーレス骨折によってTFCC損傷を引き起こすことがあります。
TFCCに橈骨と尺骨を結ぶ靱帯が含まれているため、橈骨が骨折したことで靱帯が断裂してしまうことがあります。
また、手をついたときの衝撃で手根靱帯損傷をしている場合もあります。