昨日、転んで手をついたんだよな。
それで手首が痛いのかな。
なんか腫れてるし、もしかして骨折!?
手術とか必要なのかな?
放っておいたら、やっぱりダメだよね?
手首の怪我について教えて!
そんな手首の痛みでお悩みの方にお送りします。
手首が痛い!考えられる疾患6選 もくじ
・手首の骨折
手首の骨折は、主に転倒で生じます。
多い症例としては、橈骨遠位端骨折と呼ばれる骨折です。
また、冬の時期にみられるのは舟状骨骨折です。
スノーボードでの転倒の時に後方に手をつき、骨折をする場合が多いです。
転ぶと、どうしても手が出るのが人間です。
この反応は、転倒したときに無意識に出てしまう反応なので、
よほど強い意思がなければ防ぐことができません。
橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折以外にも有鉤骨鉤骨折という疾患もあります。
意外と身近な手首の骨折について解説していきます。
・橈骨遠位端骨折とは
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手首は橈骨、尺骨、手根骨で構成されています。
手首の関節面は、主に三角骨・月状骨・舟状骨の手根骨、
橈骨・尺骨で関節をなしています。
橈骨遠位端骨折とは、手首を構成している橈骨の端が折れる骨折のことを言います。
橈骨遠位端骨折は、同時に隣の尺骨茎状突起の骨折も合併することがあります。
骨折してしまう原因としては、圧倒的に多いのは転倒です。
主に高齢者に多く、骨粗しょう症がある方は骨折のリスクが高いと言えます。
下記の文献では、骨粗しょう症と橈骨遠位端骨折の関係性を記しています。
背骨の骨折と足の付け根の骨折に並んで、
3番目に多い骨折が、この橈骨遠位端骨折と言われているようです。
また、橈骨遠位端骨折になった背景には骨粗しょう症が隠れている場合があり、
橈骨遠位端骨折をした方はその後に他の部位の骨折も起こすリスクが4倍になると言われています。
・舟状骨骨折
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舟状骨骨折とは、手首を構成している手根骨の一部である、
舟状骨が骨折することを指します。
手根骨は8つあり、手のひらをついて転倒したりすると、骨折してしまうことがあります。
特に若い人に多く、交通事故でもこの骨折が見られることがあります。
橈骨遠位端骨折は、骨粗しょう症のある高齢者に多い印象がありますが、
舟状骨骨折は、若い人に多いことが特徴です。
ウインタースポーツやコンタクトスポーツなどでの転倒でも、
舟状骨骨折が見られることもあります。
舟状骨骨折は、橈骨遠位端骨折と比べると少し厄介な骨折と言えます。
理由は、舟状骨に対する血流が少ないからです。
何か骨折をすると、血液によって患部に栄養を届けます。
それらの栄養により、骨折は治癒していきます。
しかし構造上、舟状骨には血流が少ないため、
骨折してしまうと、治癒するまでに時間がかかります。
そのため、固定期間が長期に及んだり、骨折部がずれないように、
手術でボルトを入れ、固定したりします。
舟状骨の骨折はレントゲンだけではわかりにくく、
レントゲンを注意深く見ないと見逃してしまうこともあります。
舟状骨は手首の親指側にありますので、手首の親指付近の痛みが取れない場合には、
しっかりと診察をしてもらい、骨折の有無をはっきりとさせておいた方が良いと言えます。
もし骨折の発見が遅れてしまい、痛みを我慢しつつ、
放置してしまった場合は偽関節になる可能性があります。
偽関節とは、骨折部がくっつくことなく、
関節のようになってしまうことを言います。
このような状態になると、骨の移殖が必要になったりします。
骨盤から骨を持ってきたりしますので、必要ない部分にも傷を作ることになりかねません。
舟状骨骨折をしてしまった場合、骨が大きくズレていなければ、
それほど強い痛みを感じないそうです。
この場合、痛みが残っていても、手首の捻挫だと勘違いしてしまうこともあると思います。
このような場合、骨折に気づかず、骨折部が偽関節になるリスクがありますので、
なかなか痛みが引かない場合には、CTなど詳しい検査をしてもらった方が良いでしょう。
下記の論文では、手術をしないで治療した場合と、手術をして治療をした場合の症例があり、
全体での骨のくっつく確率は80%ほどとしています。
骨がくっつかなかった例として、あまり痛みがなく、手術を拒否しており、
初めて診察に来るまでの時間も、2ヶ月ほど経過していたとの報告がありました。
やはり、早期に骨折を発見し、適切に治療することが重要な骨折だとわかります。
・有鉤骨骨折
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有鉤骨骨折は、手首にある8つの手根骨のうち、
小指側にある手根骨の骨折のことを言います。
小指側にある骨なので、テニスラケットやゴルフクラブ、
バットなどを使用する方は負担がかかりやすい場所ということができます。
この負担が長期間続き、疲労骨折してしまう場合もあります。
もちろん、橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折と同じように、
転倒で手のひらをついた時に骨折する場合もあります。
有鉤骨は構造上、手のひら側に突起があり、
その部分に負担がかかると折れてしまいます。
また、この突起の近くに尺骨神経や小指と薬指を曲げる筋肉の腱が走行していますので、
骨折による神経・腱への影響も考えられます。
有鉤骨の骨折も、舟状骨と同じく見つけにくい骨折になります。
そのため、手首の捻挫と骨折を、しっかりとわけていかなければなりません。
骨折の発見が遅くなった場合には、舟状骨と同様に、偽関節になる場合があります。
手術では、有鉤骨の突起を除去してしまったり、ボルトを入れて骨折部を固定したりします。
有鉤骨の突起はボルトでの固定よりも、切除する症例の方が多いようです。
下記の論文にも、有鉤骨骨折の治療成績は良いとされており、
5例中、4例で骨折部を取ってしまっていますが、患者さんの満足度は高く、
握力も90%以上、元に戻ったとされています。
・メカニカルストレスが原因の疾患
単純に、手首に負担がかかると発症する疾患に、TFCC損傷が挙げられます。
他にも、スポーツや仕事など、手首を酷使している人に多い疾患があります。
競技や職業の内容に関係なく発症する疾患として、キーンベック病というものがあります。
2つとも疾患名を聞いただけでは、よくわからないですよね。
ここからは、TFCC損傷・キーンベック病をそれぞれ解説していきます。
・キーンベック病
![](https://sekkotsuin-gaku.net/wp-content/uploads/2021/10/tekubigaitai5.png)
キーンベック病は、手首にある8つの手根骨のうち、
月状骨が何かの原因で柔らかくなって潰れてしまったり、
壊死してしまったりする病気のことを言います。
手首をよく使う男性に、多いとされています。
月状骨は、手首の真ん中にあり、月状骨が潰れてきたりすると
、手首の真ん中に押した時の痛みが出るようになってきます。
月状骨は体の構造上、血流があまりよくない骨と言われています。
そのため、少しの骨の損傷でもしっかりと治らずに、徐々に症状が進行し、
最終的には月状骨の壊死につながってしまうのではないかという考え方があります。
レントゲンでは、症状が映りにくいため、MRIでの検査を行い、骨の状態を確認します。
キーンベック病の原因は、不明と言われており、
症状の出始めは、ギプスで固定をしたり装具を装着したりして手首の安静を守ります。
手術で月状骨にかかるストレスを減らす物があり、
術後の成績は良い経過を辿るようです。
下記の論文では、橈骨を短くした手術の経過が報告されています。
実際のMRIの画像も掲載されており、治療経過として13ヶ月かかってはいますが、
徐々によくなっていることがわかります。
参考情報:若年者キーンベック病に対して橈骨短縮骨切り術を行なった1例≫≫
・TFCC損傷
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TFCC損傷は、手首を構成する尺骨と、
手根骨の間にある軟骨の損傷のことを言います。
主に転倒や逆立ちなどで、手首に負担がかかると軟骨を損傷してしまうことがあります。
尺骨が少し長く、手根骨を突き上げてしまうようになることが原因になることもあります。
治療としては、最初は安静にして痛みの経過を見ます。
それでも改善しないようであれば、尺骨を短くする手術を行うところもあるようです。
また、関節鏡を用いての手術もあります。
下記の論文では、関節鏡の手術の成績を報告しています。
手術によって損傷した箇所を取り除く手術ですが、術後は良い結果が得られているようです。
参考情報:スポーツによるTFCC損傷に対する鏡視下デブリードマンの治療成績≫≫
・まとめ
いかがだったでしょうか?
手首の疾患と言っても色々な物がありました。
手首の骨は細かく色々な骨があるため、骨折したり状態が変化したりする場所によって、
診断名が様々に変わります。
また、レントゲンでもわかりにくい疾患もありますので、
超音波エコーやMRI、CTなどでの繊細な診察が必要なこともわかったと思います。
手首に異常を感じたら、早めの受診を心がけましょう。