寒い時の腰痛はなぜ起こる?注意が必要な腰痛も合わせて解説
最終更新日 2021/12/21
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
寒くなると、腰痛を感じやすくなりませんか?実は、寒い日に腰痛で困っている人は多いです。今回の記事では、寒い日になぜ腰痛が出てしまうのか、危険な腰痛とはどのようなものがあるのか、という内容で解説していきます。
寒い時の腰痛はなぜ起こる?注意が必要な腰痛も合わせて解説
寒い時の腰痛の原因は血流不良
腰痛の原因の種類
・特異的腰痛
・非特異的腰痛
血行不良が起こる原因
・服装や職場環境的に冷えやすい
・ストレスが原因で腰の痛みが出ることも
注意が必要な腰痛
・胸腰椎圧迫骨折
・腰椎椎間板ヘルニア
・脊柱管狭窄症
まとめ
寒い時の腰痛の原因は血流不良
最初に結論ですが、寒い時の腰痛の原因は、血流不良が原因と言われています。
毛細血管レベルでの血流不良になるため、実際に目に見えて血色が悪くなるなどの大きな変化はありません。
腰痛の場合、レントゲンやMRIなどで原因が明らかになる場合もありますが、血流不良が原因の場合は、画像的には問題がないことが多いです。
そのため、明らかに原因を指摘されることが少なく、「自分の腰痛の原因は何なんだろう?」と疑問に思う方も多いと思います。
一口に血流不良と言っても、血流が悪くなってしまう原因は色々となりますので、細かく解説していきます。
腰痛の原因の種類
まずは、腰痛の原因の種類について解説していきます。腰痛は主に2種類に分けられます。
・特異的腰痛
特異的腰痛とは、画像で悪い部分が明らかになる腰痛のことを言います。
変形性腰椎症や、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症など、明らかに画像で病変が見つかる腰痛のこと全般を言います。
腰痛の中でも、画像でしっかりと原因がわかる腰痛は少数派であり、あまり画像的に原因を特定できるものは少ないとされています。
・非特異的腰痛
非特異的腰痛とは、画像だけでは原因がよくわからない腰痛のことを言います。
一般的にはこちらの腰痛であることが多く、ほとんどの腰痛患者のケースで画像に問題がなく、非特異的腰痛と診断されることが多いです。
温めて楽になる腰痛は血行不良が原因になりますので、レントゲンやCTなどでは、原因がはっきりしない場合が多いです。
腰の筋肉がコリ固まる筋性腰痛も画像には映らないため、その他の所見から痛みの原因を推察していきます。
血行不良が起こる原因
では、なぜ腰の筋肉に血行不良が起こってしまうのでしょうか?その原因について解説していきます。
・筋肉が硬くなる
まず、腰の筋肉自体の硬さが原因になるパターンです。
姿勢の悪さや、腹筋の弱さが原因となりやすいとされています。
姿勢の悪さは、反り腰や猫背が代表的です。反り腰になってしまうパターンとしては、骨盤が前方へ傾き、お腹を突き出すような姿勢になってしまう状態をいいます。
この姿勢のままでいると、腰の筋肉が短縮した状態が続くため、腰の筋肉が伸びづらくなってしまいます。
腰の筋肉が短縮してしまうと、更に反り腰の姿勢を改善することが困難になってしまい、悪循環に陥ります。
また、腰骨の関節も噛み合ったままになるため、腰骨の関節由来の腰痛も引き起こしやすく、関節に炎症が出ることにより、更に腰の筋肉の力が抜けにくくなります。
猫背のパターンでは、猫背の角度に合わせて腰も曲がってしまう可能性が考えられます。
腰の骨は、本来適度に反り返りがあります。しかし、猫背になってしまうと腰の反り返りが減少してしまい、衝撃の吸収ができなくなってしまいます。
骨の構造的に衝撃の吸収ができなくなってしまうと、腰の筋肉に負担がかかり始めます。
筋肉に対して負担がかかると、筋肉が緊張した状態が続いてしまい、結果として力が抜けにくくなってしまいます。
また、腰が曲がる方向にストレスがかかるため、腰の筋肉は持続的に伸ばされた状態が続きます。
筋肉は伸ばされた状態では、血管が圧迫されてしまい血流が悪くなってしまいます。
姿勢が悪くなると、筋肉が適切な長さを維持することができなくなってしまうため、血流が悪くなります。
服装や職場環境的に冷えやすい
姿勢以外でも、血流が悪くなる原因があります。
もともと職場環境的に寒い場所での作業だったり、屋外での作業だったりする人も多いと思います。
このような人は、自分の体がいくら健康でも働く環境が悪いため、環境が原因で腰痛に発展してしまうこともあります。
寒い環境では、血管が収縮しやすく、筋肉は過剰に収縮した状態になります。寒いところにいると、なかなか全身の力を抜くことができないと思います。
筋肉に力が入ったまま作業をしなければいけないため、寒くないところでの作業と比べて筋肉にかかるストレスも多くなってきます。その結果、腰痛につながってしまいます。
・ストレスが原因で腰の痛みが出ることも
血流とは少し離れてしまいますが、腰痛にはストレスも関係しているとされています。腰痛は社会的疼痛とも呼ばれており、ストレスを抱えている人は腰痛が出やすいことがわかっています。腰痛診療ガイドライン2019では、仕事や職場における心理社会的因子は、腰痛発症や予後に関与するとしており、ストレスのコントロールの必要性がわかります。
注意が必要な腰痛
同じ腰痛でも、注意が必要な腰痛もあります。寒い日に腰痛が出る方で、いつもと違う腰痛を感じたり、いつもよりも強い痛みを感じたりした時に参考にしていただければと思います。
・胸腰椎圧迫骨折
いわゆる「いつの間にか骨折」という骨折です。背骨が潰れてしまう形で、骨折をします。
主に骨粗しょう症の方に起きやすいとされますが、高いところからの転落でも骨折することがあります。
この骨折の特徴は、とにかく痛みが強いことです。骨折すると痛みで動くことができなくなってしまいます。
寝返りもできないほど、痛みが強くなる人もいます。ある程度骨がくっついてくると、徐々に動けるようになってきます。
治療期間としては4〜6週間ほどかかってしまいます。転落や尻もちなどにより、背中や腰に激痛が走った場合は、この骨折が考えられます。
折れた骨が背骨の中を走る神経に当たってしまうと、足の麻痺を引き起こしたりするため、骨折が疑われる場合は安静にする必要があり、注意が必要です。
・腰椎椎間板ヘルニア
それぞれの腰骨の間には、クッション材の椎間板と呼ばれる組織があります。
この椎間板の芯(髄核)が飛び出してしまう疾患が、ヘルニアです。
ヘルニアになってしまうと、腰骨の中を通っている神経を圧迫してしまうため、足に痺れが出てしまったり、おしっこが出にくくなってしまったり、我慢ができなくなってしまったりする症状が出てくることがあります。ヘルニアは、若い人に出やすいとされています。
重たいものを持ち上げたり腰を捻ったりする動作を多くする方は、椎間板にストレスがかかりやすいため、注意が必要です。
急激に足に痺れが出るような症状が出た場合には、ヘルニアを疑ってみましょう。
・脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症は、背骨の中を通っている神経の通り道が、何かの原因で狭くなってしまう病気のことを言います。
脊柱管狭窄症の症状で代表的なものは、長時間歩けなくなることです。
長時間歩けなくなってしまう症状は人により異なりますが、主にお尻〜足にかけての痛みや脱力感、痺れなどがあります。座って少し休憩すると、再び歩けるようになります。
しかし、また歩き出すと症状が出てきてしまい、長時間の歩行が困難になります。
脊柱管狭窄症は、中年〜高齢の男性に多いとされており、若い人は発症しません。
長年腰に対して負荷がかかることにより、神経周りの組織が肥厚・変形してしまい、神経を圧迫するので、若い人には発症しないと言われています。
まとめ
今回は、寒い時の腰痛が起こる原因と、注意が必要な腰痛について合わせて解説してきました。寒い時の腰痛の原因は、血流不良が原因であることが多く、普段の姿勢や職場環境から腰に負担がかかっており、更に寒さが重なることで腰痛につながることがお分かり頂けたと思います。
危険な腰痛として、骨折を疑うものや神経を圧迫してしまうものもあるため、重症化する前に腰をケアしていくことが必要です。服装に気をつけたり、ストレッチをしてみたり、動作を工夫してみたりと、できることは多くあると思われます。日々の生活の工夫で、腰痛知らずの体を手に入れていきましょう。
参考文献
慢性腰痛とストレスに関する検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/53/7/53_KJ00008721968/_pdf≫≫
腰痛診療ガイドライン2019
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf≫≫