股関節から音が鳴る?考えられる疾患と対処法を解説
最終更新日 2021/12/23
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
股関節から音が鳴ってしまい、お悩みの方も多いと思います。特に女性に多い症状ではないでしょうか。
今回の記事では、股関節から音が鳴る原因と、その対処法について解説していきます。
股関節から音が鳴る?考えられる疾患と対処法を解説
股関節とは
股関節から音が鳴る場合に考えられる疾患
・弾発股
・変形性股関節症
股関節から音が鳴る場合の対処法
・大腿筋膜張筋のストレッチ
・股関節伸展のストレッチ
・中臀筋の筋力強化
・大臀筋の筋力強化
まとめ
股関節とは
股関節とは、骨盤と大腿骨の頭で構成される人体の中でも大きく安定した関節です。
可動域が広く、関節的にも安定しているため、しっかりと体重を受け止めることができる構造になっています。
骨頭は軟骨で覆われており、衝撃を吸収できるようになっています。
股関節から音が鳴る場合に考えられる疾患
・弾発股
弾発股とは、股関節周りの筋肉が硬くなってしまい、股関節を動かす度に音がなってしまう現象のことを言います。
具体的には、股関節の外側の大腿筋膜張筋の延長にある腸脛靭帯と、大腿骨の大転子というでっぱりの部分が擦れてしまうことにより、音が生じることが多いとされています。
骨の構造上、大転子という部分は外側にでっぱっているため、元々、腸脛靭帯と大転子の間には、滑りを良くする滑液包という組織が存在しています。
大腿筋膜張筋が硬くなり、腸脛靭帯と大転子が擦れる圧が強くなることによって、滑液包に炎症を起こすようになってしまいます。
大腿筋膜張筋が硬くなってしまう原因としては、お尻周りの筋力低下が挙げられます。
特に中臀筋や大臀筋というお尻を構成している筋肉が弱くなってしまうと、大腿筋膜張筋が硬くなってしまう傾向があります。
また、膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋が弱くなってしまっても大腿筋膜張筋が硬くなってしまう傾向があります。
大腿筋膜張筋は様々な役割があります。
股関節を横に広げる作用や、膝を伸ばす作用、膝の角度によっては、膝を曲げる作用になることもあります。
股関節を広げる作用や膝を伸ばす作用は1つの筋肉によって生じているわけではなく、複数の筋肉の働きによって関節の運動が生じます。
そのため、1つの筋肉に負担が集中すると、その筋肉は過剰な緊張状態に陥ってしまいます。
そのまま負担が減らない状態が長く続くことにより、筋肉は硬くなっていき、様々な障害を引き起こします。
・変形性股関節症
変形性股関節症とは、股関節を構成している骨盤や大腿骨頭が変形してきてしまう病気です。
女性に多く、幼少期に先天性股関節脱臼と診断されている人に多いとされています。
また、交通事故などで、過去に股関節の怪我をしている人も、変形してしまうリスクがあります。
変形の初期には股関節周りが軽く痛んだり、歩きはじめに違和感がある程度の症状で済みますが、徐々に症状が進行してくると、長く歩くことが困難になってきたり、立ち上がりだけでも痛みが出てしまったりします。
最終的には歩くことが困難になり、人工関節に入れ替える手術が必要になる場合があります。
変形性股関節症と診断される人の多くが、反り腰になっていることが多いです。
これは、股関節自体の骨の安定性が損なわれるため、骨盤を前に倒して、より多くの面積で骨盤が骨頭を覆えるようにするためと考えられています。
そのため、股関節の変形が強い人は、反り腰が強く、腰痛や腰部脊柱管狭窄症などの症状を合併している場合があります。
股関節を人工関節に入れ替える手術をすると、股関節の安定性が向上するため、骨盤を前に傾けておく必要がなくなります。
手術後のリハビリでも骨盤に向けたアプローチをしますので、徐々に腰の症状も軽くなることが予想されます。
股関節と腰は近い場所にあることから、互いに大きく影響しあいます。股関節の変形が疑われる人は腰の症状にも注意が必要です。
股関節から音が鳴る場合の対処法
股関節から音が鳴る場合は、股関節の動きが硬くなってしまい、股関節周りの筋力が落ちている可能性があります。
そのため、関節を柔らかい状態を維持しておくことと、筋力をなるべく落とさないようにすることが必要です。
ここからは股関節のストレッチや筋トレをご紹介していきます。
では、なぜ腰の筋肉に血行不良が起こってしまうのでしょうか?その原因について解説していきます。
・大腿筋膜張筋のストレッチ
1. 仰向けに寝て足先にタオルをひっかけます。
2. タオルをひっかけた方の足を反対方向へひっぱり、股関節の外側を伸ばしていきます。
3. 痛みが少し出るか、痛みが出るギリギリのところで、姿勢をキープします。
4. この状態で、30秒を目安にストレッチしていきます。
5. 上記のストレッチを5回ほど行います。
・股関節伸展のストレッチ
1. 足を前後に大きく広げます。
2. 伸ばしたい方の膝を床につけ、前に重心を移動していき足の付け根を伸ばします。
3. 多少痛いくらいの強さで、30秒を目安にストレッチをしていきます。
4. 上記のストレッチを5回ほど行います。
・中臀筋の筋力強化
股関節の動きが硬くなってくると、悪い方の足にしっかりと体重を乗せることができません。
そのため、片足立ちに必要な筋力が徐々に弱ってきてしまいます。片足立ちに必要な筋肉は、中臀筋と呼ばれ骨盤の横〜後ろにくっついています。
この筋肉のトレーニング方法をご紹介します。
1. 横向きに寝て足を伸ばす。(下の足は曲げていてもOK)
2. 上の足を持ち上げていきます。
3. 20回を目安に少し疲れる程度まで、数セット行います。
※注意点
・足を持ち上げる時に爪先が上を向かないようにする。
・運動している最中に骨盤が前後に倒れないようにする。
・辛くなってくると足が体の前に出がちになるため、少し後ろに上げるように意識する。
・大臀筋の筋力強化
大臀筋は、お尻のふくらみを形成している筋肉です。
歩く時にもしっかりと体を支えるために重要な役割をしています。
変形性股関節症になると、股関節に痛みを伴うため、しっかりと体重を乗せなくなってしまうため、筋力が低下してしまいます。
筋力が低下すると、関節に対しさらに負担が増加し、さらに痛みが強く出るようになるという悪循環に陥ります。
その悪循環を断ち切るためにも、筋力強化が必要になります。
1. 両膝を曲げて仰向けに寝ます。
2. 両足で踏ん張ってお尻を持ち上げます。
3. 頭を持ち上げるとさらに効果的です。
※注意点
・手の力でお尻を持ち上げないように注意する。
・あくまでお尻の筋トレなので、腰の筋肉に過剰に力が入らないように注意する。
・お尻の筋肉に力が入っていないように感じる場合は、足を大きく広げて行うとお尻を意識しやすい。
・ももの裏に力が入ってしまう時には、膝を深く曲げるか、踵に力を入れるように意識する。
まとめ
今回の記事では、股関節から音が鳴る場合に考えられる疾患とその対処法について解説してきました。
股関節から音が鳴る疾患としては、弾発股と変形性股関節症が考えられます。
弾発股は股関節の筋肉が弱くなってしまい、大腿筋膜張筋への負担が増すことが原因で、腸脛靭帯と大転子が擦れることにより音がなる現象です。
変形性股関節症は、股関節を構成している骨そのものが変形してくる疾患です。
初期の頃には、歩き始めの違和感など、わずかな症状だけですが、症状が進行してくると音が激しくなるようになったり、痛みが強く歩くことが困難になってしまうことが考えられます。
治療法としては、股関節を人工のものに入れ替える手術があります。
股関節から音が鳴る疾患の対処法としては、股関節の可動域を保つストレッチと、お尻周りの筋力強化をご紹介しました。
どれもご自宅で簡単にできるものばかりですので、実際に試してみてください。
もし、自分でストレッチや筋力強化を行っても症状が改善されない場合には、専門家の診察を受けてみてください。
早期に股関節の疾患を発見することができれば、早い段階から適切な対処ができ、症状が重症化する可能性を下げることができます。
早期に治療を開始して、股関節の違和感から開放された日常を手に入れてください。