LINE相談
TEL LINE

肩関節脱臼は繰り返す可能性も!原因や治療法を解説 | 接骨院がく整骨院/針灸整体院グループは日祝日も交通事故施術に対応

駐車場完備
駐車場完備
茂呂院
伊勢崎院

肩関節脱臼は繰り返す可能性も!原因や治療法を解説

最終更新日 2022/10/22
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修

肩関節脱臼は、スポーツ場面で多く見られるケガです。
「骨が折れていないから大丈夫」「脱臼を元に戻せば大丈夫」と感じる方もいるかもしれませんが、実は肩関節脱臼は繰り返して起こりやすく、日常生活にも支障が出やすいのです。
この記事では、肩関節脱臼の原因や治療法などについて解説します。

肩関節脱臼は繰り返す可能性も!原因や治療法を解説 もくじ

・肩関節脱臼とは

・脱臼を繰り返す、反復性肩脱臼とは?

・肩関節脱臼の応急処置

・肩関節脱臼の検査方法

・肩関節脱臼の治療法

・まとめ

肩関節脱臼とは

私たちが日常生活で腕をスムーズに動かすためには、肩関節での上腕骨と肩甲骨の間の構造が大きく関係しています。上腕骨の端の上腕骨頭という部位はボールのような形状をしていて、肩甲骨の関節窩はその受け皿の役割をしています。このような関節の形状だけでなく、関節包や靭帯と言った組織や筋肉などにより、肩関節を安定させながら複雑な動きが可能となっています。
肩関節脱臼とは、接触などの強い外力が原因で上腕骨頭が関節窩からずれてしまった状態です。

・肩関節脱臼の原因は?

肩関節と似たような構造を持つ関節には、股関節があります。股関節の場合は、受け皿となる部分に深さがあり、健常な方が脱臼を起こすことは稀です。肩関節の場合は、受け皿となる関節窩が比較的浅く小さいので脱臼が起こりやすいのです。

肩関節脱臼が起こる原因として、肩関節に強い力が加わることが挙げられます。特に、腕を上げた状態で、後方への力が加わることによる前方脱臼が多いと言われています。転倒して手を地面についたときにも起こりやすいです。
どの年代でも受傷しやすいですが、特に若い男性と高齢の女性に多い傾向があります。若い男性はスポーツ活動を活発に行うこと、高齢の女性では転倒のしやすさが原因であるとされています。

・肩関節脱臼はどんな場面で起こりやすい?

肩関節脱臼は、スポーツ場面で多く見られるケガです。柔道やラグビーなどのコンタクトスポーツや、バスケットボールでブロック中の接触、野球やバレーボールなどでスライディング、アイスホッケーやスノーボードなどの転倒が多いスポーツなどで起こりやすいです。

・肩関節脱臼の症状は?

肩関節を脱臼すると、肩に痛みが生じたり動かしにくくなったりします。また、肩の高さが低くなったり、肩が角ばったりするなど、見た目に変化が現れることもあります。
肩関節周囲の神経が圧迫したり損傷を受けたりすることで、腕や指先などにしびれが生じることもあります。
また、肩関節脱臼の際に腱板損傷を合併することもあります。

脱臼を繰り返す、反復性肩脱臼とは?

一度肩関節を脱臼してしまうと、関節がゆるくなってしまい脱臼を繰り返してしまうことがあります。この状態を反復性肩脱臼といいます。
肩関節の脱臼を防ぐために大切な組織として、関節唇という軟骨組織があります。関節唇は関節窩を囲むように付いていて、上腕骨頭が外れないようにする役割がありますが、脱臼の際に損傷しはがれてしまうことがあり、これをBankart損傷といいます。Bankart損傷は、反復性肩脱臼に移行してしまう大きな原因です。
初めての脱臼は、衝突や転倒などの大きな外力がきっかけであることが多いです。しかし、反復性肩脱臼の場合は、肩関節の運動や日常生活での些細な動きがきっかけで、脱臼してしまうこともあります。前方脱臼の場合、再脱臼しやすい動きとして、手を後ろに回したり、手のひらで後頭部を触ったりといった姿勢(外転・外旋位)が挙げられます。投球動作や背中側で衣類のひもを結ぶなどの動作が当てはまるので、注意が必要です。
また、肩関節脱臼を受傷した年齢が低いほど、反復性肩脱臼に移行しやすいと言われています。10歳代での肩関節脱臼の80~90%が反復性肩脱臼に移行したとの報告もあり、適切な治療やリハビリを行うことが大切です。

肩関節脱臼の応急処置

肩関節脱臼の疑いがある場合、ずれてしまった骨同士を正しい位置に戻す整復をすみやかに行う必要があります。スポーツ場面でトレーナーや医師、柔道整復師などの専門家が近くにいる場合には整復してもらいましょう。専門家が近くにいない場合には、むやみに動かしたりせず、すぐに受診しましょう。
脱臼は骨折と見分けがつきにくい場合もあります。肩関節脱臼と同じような場面で起こりやすいケガとして鎖骨骨折があります。鎖骨骨折の場合は、出血して骨が見えている場合や内出血がひどい場合もあります。血管や肺を損傷している可能性もあるので、救急車を呼びましょう。

肩関節脱臼の検査方法

肩関節脱臼は起こったときの状況や症状などの問診や視診、触診などで判断でき、整復により正しい位置に骨が戻ります。肩関節脱臼では骨折や肩関節周囲の組織を損傷している可能性もあり、必要に応じてX線検査やMRI検査などを行います。

肩関節脱臼の治療法

整復により脱臼した関節は正しい状態に戻りますが、脱臼を繰り返さないように、以下のような治療が行われます。

・肩関節の固定

肩関節脱臼のあとは、脱臼を繰り返すのを防ぐために3週間程度の安静が必要となります。
三角巾や装具を用いて肩関節を固定します。大袈裟に見えてしまうかもしれませんが、脱臼を繰り返さないためにも安静にすることは大切です。固定期間が終わり、肩の痛みがなく動かせるようであれば、リハビリテーションを行います。

・手術療法

反復性肩脱臼に移行してしまった場合や、コンタクトスポーツへの復帰のためには、手術が選択されることもあります。

・関節唇形成術
Bankart損傷に対して行われる手術で、最も多く行われている手術です。ネジや糸を関節窩に入れて、剥がれてしまった関節唇を縫い合わせる方法です。関節鏡視下で行われるので皮膚を大きく切開することなく行えます。

・腱板疎部閉鎖術
関節唇形成術と組み合わせ、再脱臼のリスクをより減らすために行われます。腱板疎部という、肩甲下筋腱と棘上筋腱の間にある薄い膜を縫い合わせて締め、脱臼を防ぐ方法です。

・レンプリサージ法
腱板疎部閉鎖術と同様、関節唇形成術と組み合わせて行う方法です。脱臼の際に上腕骨頭の後方の一部が陥没してしまうことがあり、その陥没部分を埋めるように縫い付けます。

・烏口突起移行術
関節唇形成術後に脱臼してしまった場合や、コンタクトスポーツへの復帰に向けて行われることが多い手術です。肩甲骨の前側の烏口突起という部分を切って関節窩の前方にネジで留め、壁をつくるようにして脱臼を防ぐ方法です。関節唇形成術よりも再脱臼を防ぐ効果が高いです。

・リハビリテーション

固定期間が終わったあとや手術後には、リハビリテーションを行います。固定後や手術後には腕の動かしにくさが残っていることが多く、スタッフの力を借りながら徐々に動かせる範囲を広げていきます。
肩関節脱臼のリハビリには、筋力トレーニングも重要です。肩関節の脱臼を防ぐために大切な筋肉が、腱板と呼ばれるインナーマッスルです。少ない負荷でも鍛えることができるので、チューブなどを用いながら行い、必要に応じて自主トレーニングの指導もあります。
再脱臼のリスクがあるので、肩関節の運動や筋力トレーニングの際は絶対に自己判断で行わず、専門家の指導の下で行ってください。

まとめ

肩関節脱臼は、衝撃や転倒と言った衝撃によって起こりやすく、予防することは困難です。また一度脱臼すると再発しやすく、日常生活にも影響が出ることもあり厄介なケガであると言えます。誰にでも起こりやすいケガだからこそ、脱臼の疑いがあるときに迅速な行動をとれるような心構えが大切です。

参考文献
岩堀裕介、花村浩克、他:スポーツ選手の反復性肩関節前方脱臼の術後リハビリテーション、2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/10/56_56.752/_article/-char/ja/
伊藤信之、衛藤正雄、他:肩関節前方脱臼のメカニズム、1991
https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/15/2/15_200/_article/-char/ja/
松野丈夫、中村利孝、他:標準整形外科学、P733、2014