膝を曲げると痛い!膝に生じる疾患について解説
最終更新日 2021/11/10
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
膝を曲げると、どうしても痛みが走る。足に体重がかけられない。そんな症状でお悩みの方も多いと思います。膝の動きは、簡単なようで実は繊細です。少しの筋力の不足や関節の炎症、組織の損傷によって痛みが出てしまいます。また、膝を曲げた状態と伸ばした状態では、荷重がかかる部分も変わってきます。今回の記事では、そんな繊細な膝を曲げた時の痛みについて解説していきます。
膝を曲げると痛い!膝に生じる疾患について解説
膝が曲がるとどうなる?
膝を曲げると痛みが出る疾患
・変形性膝関節症
・半月板損傷
・関節リウマチ
・膝靭帯損傷
・大腿骨顆部壊死
まとめ
・膝が曲がるとどうなる?
そもそも膝が曲がる時は、どのような動きを伴うのでしょうか?
膝が曲がる時には、膝のお皿(膝蓋骨)が下に下がります。
また、ももの骨(大腿骨)と膝下の骨(脛骨)で構成している関節部分の荷重面は、
徐々に後ろに移動していきます。
この時に、半月板も多少動きます。
動きが広い関節なので、安定性が失われないような機能が半月板にはあります。
膝を深く曲げていくと、膝下の骨(脛骨)は、
少し内側にねじれながら曲がっていきます。
膝に対する圧力を調べた研究では、膝を伸ばしている状態よりも、
90度付近まで曲げた状態の方が、膝への圧がかかるとされています。
この辺りは、感覚的にもわかるのではないでしょうか。
お皿の後ろの関節(膝蓋大腿関節)、いわゆる膝関節(脛骨大腿関節)、
両方の関節で膝を曲げた方が、圧が強まるとされています。
ここからは膝を曲げると痛みが出る疾患について解説していきます。
・膝を曲げると痛みが出る疾患
・変形性膝関節症
変形性膝関節症は、50〜60代の女性に多く見られる疾患です。症状の出始めは、膝が重たかったり、歩き始めだけに痛みが出たりする程度で、痛みも長引きません。徐々に症状が進行してくると、立ち上がりや階段昇降、正座でも痛みが出てきます。痛みが出る頻度や、時間も増えてきます。症状がさらに進行すると、膝がしっかりと伸びきらなくなってしまったり、歩くだけでも痛みが出てしまったりして、生活に支障が出てきます。夜も痛みが出てしまい、寝ていても寝返りなどで痛みが出てしまう場合もあります。
変形性膝関節症の原因としては、体重や筋力、年齢などの要素が原因として挙げられています。膝は、体重以上に負荷がかかってしまう関節です。歩行では体重の3倍、階段昇降になると、体重の7倍近くの負荷がかかってしまうとされています。
また、年齢の影響も受けるとされており、年齢を重ねると半月板や軟骨の弾力が失われ、損傷しやすい状態になってきます。すると、膝に対するちょっとした悪いストレスで、容易に膝の組織を損傷してしまうことになります。高齢になると、筋力は少なくなりやすく、関節には負担がかかりやすいため、80歳以上の男性の60%、女性の80%以上で膝に変形が認められたという研究結果も出ています。
膝の変形は、膝を構成しているももの骨(大腿骨)・膝下の骨(脛骨)の間だけでなく、お皿(膝蓋骨)の裏にも変形が出てきます。膝が伸びにくくなってくると、お皿の裏にも大きなストレスがかかります。杖など、歩きを助けてくれる道具を上手に使いながら、足への負担を減らしていくことが必要になる場合もあります。
・半月板損傷
半月板は、膝にあるクッションの役割をする組織です。内側と外側に分かれており、それぞれ関節の適合性を高めるような効果も持ち合わせています。若い人の半月板は、柔軟性があり、少しの力では損傷はしませんが、40歳以上になってくると、少しの力でも損傷する可能性が出てきます。半月板は、様々な形で損傷します。損傷の形により、縦断裂、水平断裂など様々な名前がついています。半月板の外側には血流があり、損傷しても自然に治る可能性がありますが、内側を損傷してしまうと血流が無いため、自然には治りにくいとされています。損傷した半月板が毛羽立ってしまったり、小さな破片として関節内を漂うような状態になってしまったりして、膝に挟み込まれてしまうと、ロッキングという状態になってしまいます。ロッキングの状態になってしまうと、膝を曲げ伸ばしすることができなくなってしまうほどの痛みが出てしまいます。
膝は伸びた状態と曲げた状態では、荷重がかかる位置が変わってきます。研究では、膝を曲げると、膝の後方に荷重がかかるとされているため、膝を曲げた時に痛みが出るようでしたら、半月板の後方に損傷がある可能性が考えられます。
半月板を損傷すると、膝の関節内で出血してしまったり、膝に水が溜まってしまったりすることがあります。膝に血や水が溜まってしまうと、膝をしっかりと伸ばせなかったり、力が出なかったりします。溜まる量が多ければ、水を抜いてもらうことも必要になるかもしれません。
半月板損傷の治療は、リハビリなどで様子を見る場合と、手術をする場合があります。手術をする場合には、損傷している部分を切り取る手術と、損傷している場所を縫合する手術の2種類があります。手術は、小さな傷で済む関節鏡を用いることがほとんどです。
・関節リウマチ
関節リウマチは、自分の免疫機能が自分の体を攻撃してしまい、自分の関節を破壊してしまう病気です。自分の免疫が原因なので、外部からバイ菌が入って発症するというわけではありません。関節には、慢性的に炎症が起きてしまうので、関節にある滑膜という組織が異常に増殖してしまいます。症状が進行してくると、膝や股関節などの関節が変形してしまい、関節の入れ替えの手術が必要になる場合もあります。
女性に多い疾患で、症状の程度は人により様々です。炎症が出る時期と良くなる時期を繰り返すことが特徴です。
治療としては、リウマチの活動を抑える薬が用いられます。この薬だけで症状を抑えきれない場合には、免疫を抑制する薬が用いられることもあります。
・膝靭帯損傷
膝には、4つの靭帯が存在します。内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4本です。もっとも損傷の頻度が高いのは、内側側副靭帯と言われています。足をひねることにより、靭帯の損傷をします。ひねること以外にも、転落や転倒、交通事故など、強い力が膝に加わることによっても、靭帯を損傷することがあります。
靭帯を損傷してしまうと、関節内で出血をすることがあります。徐々に腫れや出血はおさまってきますが、膝を曲げることにより関節内の圧が高まりますので、腫れている間は膝を曲げると痛みが出やすい状況になります。腫れが治ってくると、足にも力が入るようになってきますが、靭帯を損傷してしまい構造的に緩くなってしまうと、損傷した部位に応じた膝の不安定感を感じるようになってしまう場合もあります。完全に靭帯が断裂している場合は、手術が必要になる場合もあります。疑わしい場合には、専門家に相談が必要になります。
・大腿骨顆部壊死
60代以降の女性に見られる、大腿骨膝側(大腿骨顆部)の突発的な壊死のことを言います。特に体重がかかる面で、壊死が見られます。レントゲンやMRIで画像をチェックすると、壊死している部分が影のように写っていたり、MRIでは、白く映し出されたりすることもあります。もともと変形性膝関節症がある方に、よく発症するようです。骨の弱さも、発症と関連があるのではないかと考えられています。
骨の壊死なので、強い痛みが生じます。膝の関節の隙間が減少してきてしまい、最終的には関節の隙間がほとんどなくなってしまうほど、関節の変形が強くなる場合もあります。このような状況になってしまい、膝の痛みで生活に支障が出てくるようだと、膝に人工関節を入れる手術が適応になってきます。日頃から骨の状態を強く保ったり、膝に負担が生じないように筋力を落とさないようにしたりしていくことが予防策になります。
・まとめ
今回の記事では、膝を曲げると痛みが出る疾患についてまとめてきました。そもそも膝は、曲げると関節内の圧が上がってしまう構造になっています。そのため膝に変形があったり、炎症があったり、何かしらの損傷があると、痛みが出やすい構造になっています。疾患の内訳を見てみると、女性に多いことがわかります。女性は、ホルモンバランス的にも靭帯の損傷をしやすい時期があり、閉経後は骨も弱くなりやすいです。そのため、日頃から筋力トレーニングや体重の管理、痛みが出てしまったら早めに専門家へ相談することが必要になります。日頃から膝の症状と向き合いながら、重症化を予防していきましょう。
参考文献
変形性膝関節症の病態と悪化因子
https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=13629&file_id=20&file_no=1≫≫
変形性膝関節症の診断と治癒
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/28/3/28_KJ00001309637/_pdf≫≫
変形性膝関節症に対する筋力トレーニング再考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/20/3/20_3_235/_pdf≫≫
日本整形科学会 「関節リウマチ」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html≫≫
日本整形外科科学会 「膝靭帯損傷」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ligament_injury_of_th_knee.html≫≫
日本整形外科科学会 「半月板損傷」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/meniscal_tear.html≫≫