指先の腫れ・変形に注意!へバーデン結節の病態と治療法を解説
最終更新日 2022/10/17
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
一般的に指の「第一関節」と呼ばれる指先の関節が腫れたり、変形を起こしたりして痛みを感じていませんか?
その症状は、もしかしたら「へバーデン結節」かもしれません。
へバーデン結節は、軽症のものから手術を必要とする重症のものまであります。
指先に症状が生じしたら、我慢せず専門家を受診するようにしましょう。
今回は、「へバーデン結節」の病態や治療法などを解説していきます。
指先の腫れ・変形に注意!へバーデン結節の病態と治療法を解説 もくじ
・へバーデン結節とは?
・発生原因
・症状
・診断
・治療方法
・まとめ
へバーデン結節とは?
ヘバーデン結節とは、指のDIP関節(一般的には第一関節)に発生する病気です。
指先の骨は、先の方から末節骨、中節骨、基節骨という骨でできています。このうち、末節骨と中節骨の間にある関節をDIP関節(遠位指節間関節)、中節骨と基節骨の間にある関節をPIP関節(近位指節間関節)と言います。つまり、DIP関節というのは指の一番先にある関節のことを言います。
指の解剖を、もう少し詳しく見ていきましょう。指の背側に注目すると、指を伸ばすための機構があります。指を曲げ伸ばしする筋肉は、前腕にあります。特に指を伸ばす筋肉は伸筋とよばれ、前腕の背側(手の甲側)にあります。そして、その伸筋から腱が指にのび、手の甲を通過して末節骨、中節骨に付着しています。これにより、前腕にある伸筋が収縮すると指を伸ばすことができるのです。
ヘバーデン結節は、この伸筋の腱が末節骨に付着する部位の左右に結節(コブのようなもの)ができる病気です。また、コブができるだけではなく、指全体の構造が変化し、変形も起こします。
加齢などにより、膝や股関節に変形性関節症という状態が起こります。変形性関節症とは、長年の関節への負担によって摩耗し、変形が起こり、痛みが起こってくる病気です。ヘバーデン結節は、指の関節にこのような変形性関節症が発症したものと言われています。
発生原因
ヘバーデン結節が、どうして発生するのかという原因ははっきり分かっていません。しかし、実際に発症している人をみると、その傾向があります。
・手首に負荷のかかるスポーツ・仕事
まずよく言われるのが、手首をよく動かす人に発生しやすいと言う事です。
指を使う仕事ももちろんですが、指と言うより手首を動かす人に多いようです。
スポーツで言えばテニスやゴルフ、仕事で言えばパソコンでよくタイピングをする人や、ドライバーでネジを回すなど、手首を頻繁に使用すると前腕から指先にかけて伸びている筋肉に負担がかかりへバーデン結節を発症する可能性が高まります。
・女性の体質
ヘバーデン結節の発症者の多くは、女性です。
こちらも因果関係ははっきり分かっていませんが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが大きく関係していると言われています。
エストロゲンは、関節の腫れを取る抗浮腫作用があり、閉経したことによってエストロゲンの分泌が減少し、関節が炎症を起こしてしまうのです。
・加齢による手指の変形
日常生活では、手首を動かす動作が多くあります。
それらの動作の積み重ねによって、中年以降にヘバーデン結節を発症する人が多くいます。一般的には、40歳以降に発症する事が多いようです。
症状
へバーデン結節で生じる症状について、解説します。
・指の第一関節の腫れ・変形
ヘバーデン結節の症状そのものと言えるのが、DIP関節(指の第一関節)の腫れや変形です。DIP関節周囲が腫れて、とくに症状が強いときには赤みを帯びたり、熱を帯びたりと炎症が起こっているような症状が見られます。
このような炎症が起こっている状態は、痛みも強く生活動作に支障が生じてしまいます。
・粘液嚢腫(ミューカスシスト)
ヘバーデン結節ができると、指の関節周囲が全体に腫れるだけではなく、水ぶくれのような粘液嚢腫ができます。この粘液嚢腫のことをミューカスシストと言い、透き通ったぷっくりとした出っ張りを認めます。
・指の痛み
指を曲げ伸ばししたときに、強い痛みを感じます。痛みは先ほど説明した通り、指に炎症が起こっている際に特に強くなります。このように炎症が強い時には、安静時にも痛みを感じたり、少し動かしただけでも痛みを感じたりします。
また、炎症が起こっていない状態であっても、関節の変形が起こっていれば指を動かすと痛みが生じます。
診断
へバーデン結節と診断する判断材料、またへバーデン結節に似た指の病気との鑑別を含めて紹介します。
・関節リウマチとの違い
関節リウマチは、指先の変形が起こる代表的な病気です。
ヘバーデン結節は関節の中が摩耗することで発生する病気ですが、関節リウマチは関節内の潤滑油的役割を果たす滑膜の病気です。
リウマチは、何らかの原因で滑膜に炎症が起こることで関節全体が破壊され、変形を起こします。指に限らず多くの関節に発生し、変形が見られることや、血液中の抗体を検査するなどの方法で関節リウマチと診断します。
・ブシャール結節との違い
ヘバーデン結節は第一関節であるDIP関節に発生する病気でしたが、ブシャール結節は第二関節であるPIP関節に発生する病気です。
へバーデン結節とブシャール結節は場所が違うだけで、発症機序や症状はほぼ同じです。
・視診
一般に、ヘバーデン結節はDIP関節周囲の腫脹がある事で診断がつきます。
また、粘液嚢腫(ミューカスシスト)が認められたら、より診断が確実となります。ただし、関節リウマチの発生初期で、DIP関節のみに変形が出ている場合は、確実に鑑別ができない事もあります。
・エコー検査(超音波検査)
超音波検査を行うと、関節の中の組織の状態を確認することができます。以前は触診や視診のみで診断していたため、関節の中のどのような部分に炎症が起こっているのか分からず、関節リウマチの初期とヘバーデン結節の区別がなかなかつきませんでした。しかし超音波検査で、どの部分に炎症が起こって変性しているのかを確認することで、両者を鑑別することができるようになっています。
・X線検査(レントゲン検査)
レントゲン検査では、骨や関節の状態を確認することができます。どの程度変形しているのか、変形は骨の中でもどの部分に発生しているのかを確認することで、診断はもちろんですが病気の進行度を確認することができます。
治療方法
ヘバーデン結節に対しての治療方法を紹介します。
・局所安静
ヘバーデン結節に限らず、変形性関節症の最も重要な治療は安静です。
関節に変形が起こった状態で動かすと周囲の組織に異常な力が加わり、炎症が発生し痛みや腫れを引き起こします。
さらに、炎症によって変形が更に強まる可能性もあるため、安静は症状を抑えるためにも、病状を進行させないためにも大切なのです。
・テーピング・装具
局所の安静をサポートするために、指や手首にテーピングを巻いたり、装具を使用したりすることがあります。
テーピングや装具を使用し、痛みが生じない位置に指を固定したり、指先に負担がかからないように手首を固定したりします。また、専用の装具を使用する事は、関節を安静にするという点では状態の改善に役立ちます。
・薬物療法
薬物療法は、主に2種類に分かれます。現在の症状を抑えるための鎮痛薬と、病状の進行を抑えるための薬です。
鎮痛薬は、ロキソニンをはじめとした消炎鎮痛薬がよく使用されます。炎症が起こることで痛みが生じるため、薬でこの炎症を抑えていきます。しかし、消炎鎮痛薬には副作用があるため、あまり連用は好ましくありません。
病状の進行を抑えるためには、エストロゲンと似たような作用を持つエクオールという薬剤を服用します。
・注射
特に痛みが強い時期には、炎症を抑えるためにステロイドの関節内注射が行われます。しかし、これは根本治療ではなく、あくまで症状を抑えるための治療となります。
・手術
痛みが強い場合や変形が強い場合、手術も考慮されます。
手術も大きく分けて、2種類に分かれます。
1種類目は、関節を動かすことで痛みが生じるため、関節が動かないように末節骨と中節骨の間にピンを入れ、動かないように固定する手術です。比較的簡易的な手術になります。
そして、2種類の手術は、変形した骨を削る手術です。骨の形を形成することで、指を動かしても周囲の組織に負担がかからないようにする手術です。1つ目の固定の手術と併用して行う場合もあります。
まとめ
今回は、指先に発生する腫れ・変形により痛みが生じるヘバーデン結節について、詳しく解説してきました。
手首や指をよく使う女性に多い病気で、関節リウマチの初期と鑑別が難しい病気ですが、近年では超音波検査を利用して鑑別することができます。
基本的には保存療法が第一選択ですが、重症なものに対しては手術を行う場合もあります。我慢せず早めに専門機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
参考文献
辻田 祐二良 他:「『指曲がり症』 (へバーデン結節)発生メカニズム」1988年30巻6号p486-487
犬飼 智雄 他:「へバーデン結節に対する関節固定術定術の治療成績」2013年56巻1号p235-236
糸満 盛憲 他:整形外科学 p205 2016
中村利孝他:標準整形外科学 p270,464 2017
日本整形外科「へバーデン結節」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/heberden_nodes.html
株式会社 日立保険サービス「へバーデン結節」
https://www.hitachi-hoken.co.jp/woman/illness/p18.html
更年期ラボ 「手指の痛み・しびれ・変形①の原因・症状と対策方法」
https://ko-nenkilab.jp/symptom/finger.html