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首から腕にかけての痺れはこれが原因?胸郭出口症候群の病態と治療法 | 接骨院がく整骨院/針灸整体院グループは日祝日も交通事故施術に対応

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首から腕にかけての痺れはこれが原因?胸郭出口症候群の病態と治療法

最終更新日 2022/6/29
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修

ドライヤーで髪を乾かすときや洗濯物を干すとき、電車のつり革をつかむときなど、腕を頭上まで挙げた時に、首から腕にかけての痺れが生じた経験はありませんか?
その痺れ、もしかしたら「胸郭出口症候群」かもしれません。胸郭出口症候群は20代の若年者から発症する首周り〜肩の病気です。
今回は、「胸郭出口症候群」の病態や治療法などをご紹介していきます。この記事を読むことで、あなたの痺れの悩みが解決されるかもしれません。

首から腕にかけての痺れはこれが原因?胸郭出口症候群の病態と治療法説 もくじ

・胸郭出口症候群とは?

・胸郭出口症候群のタイプ

・胸郭出口症候群の原因

・症状

・診断

・治療方法

・まとめ

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群とは、首から腕にかけて通っている神経が、何らかの原因で締め付けられてしまう絞扼性神経障害の一つです。
男性は30代、女性は20代と若年者で、特に女性に多い疾患です。
首には腕神経叢と言われる神経の束が存在し、その束から5本の神経が枝分かれするように指先まで伸びていきます。
この神経は腕の運動機能や知覚機能を司っているため、神経が締め付けられることにより、首から腕にかけて痛みや痺れ、重怠さなどの症状が発生します。
この枝分かれした神経は、絞扼部位と呼ばれる3つの「トンネル」を通って、指先へと伸びていきます。
この3つのトンネルが、胸郭出口症候群の原因となります。

・斜角筋間隙

腕神経叢が、首から腕に至る道のりで最初に通るトンネルです。このトンネルは、首に存在します。首から肋骨にかけて走行している前斜角筋、中斜角筋と、第1肋骨(肋骨の一番上)で構成されるトンネルです。

・肋鎖間隙

斜角筋隙を通った後の2つ目のトンネルで、鎖骨の真下に存在します。
上面が鎖骨、下面が第一肋骨で構成されるトンネルです。

・小胸筋下間隙

肋鎖間隙を通り,最後に通る3つ目のトンネルです。
肩から肋骨にかけて走行している小胸筋と、肩と鎖骨を繋ぐ靱帯である烏口鎖骨靱帯で構成されるトンネルです。

胸郭出口症候群のタイプ

胸郭出口症候群の発生原因には、圧迫型と牽引型、混合型の3つのタイプがあります。

・圧迫型タイプ

外傷によるもので、骨や筋肉が神経や血管を圧迫し、症状が出現するタイプです。
交通事故やスポーツ外傷などによる、強い衝撃が引き金となって発症します。
また、美容師や電気工事、看板屋など、腕を挙げた姿勢で作業を行う職業の方も、負荷が蓄積され発症することがあります。

・牽引型

体型や姿勢などにより、神経が引っ張られて症状が出現するタイプです。「首長」や「なで肩」などの不良姿勢により、腕が下方に引かれて神経を牽引されてしまうことで発症します。

・混合型

圧迫型と牽引型の、どちらも原因で症状が出現するタイプです。
3つのタイプの中で最も多いのが混合型になっています。
胸郭出口症候群は、先ほど紹介した3つのトンネルで圧迫や牽引が起こり発症するものです。

胸郭出口症候群の原因

次に、トンネル毎にどのようなことが原因で症状が出現するのか、紹介していきます。

・斜角筋間隙

斜角間隙を構成する、前斜角筋と後斜角筋が原因で発症します。
デスクワークやスマホ操作などにより、首への疲労が蓄積され、前斜角筋と後斜角筋が固くなり、下方にある第一肋骨を過剰に引き上げてしまい、トンネルを狭めてしまいます。
それにより、神経や血管が圧迫されることで症状が出現します。
この状態を、「斜角筋症候群」と呼びます。

・肋鎖間隙

肋鎖間隙を構成する、鎖骨の位置が原因で発症します。
「なで肩」などの不良姿勢により、鎖骨が下方へ引っ張られ、第一肋骨と構成するトンネルを狭めてしまいます。
それにより、神経や血管が圧迫、牽引され症状が出現するのです。
さらに、この状態で腕を上に挙げると、よりトンネルが狭くなり、症状が強まることがあります。
この状態を「肋鎖症候群」と呼びます。

・小胸筋下間隙

小胸筋下間隙を構成する、小胸筋が原因で発症します。
デスクワークなど身体が前傾になる姿勢が長時間続くと、小胸筋が短くなっている時間が長くなり、硬くなってしまいます。
その状態で腕を横に広げる運動を行うと、トンネルが狭まり神経や血管を圧迫し、症状が出現します。
電車でつり革をつかむ、ドライヤーで髪を乾かすなど、腕を高く挙げる動作で症状が出現することが多いです。
この状態を「過外転症候群」と呼びます。

症状

次に、胸郭出口症候群の症状について解説していきます。

・痛み・痺れ

3つのトンネルが、筋肉の過緊張や姿勢不良により、神経が圧迫・牽引され腕に痛みと痺れが出現します。
腕神経叢は枝分かれし,首から腕に付着している筋肉へと枝を伸ばしています。
そして、運動機能や感覚機能の役割を担っています。
そのため、大元になっている神経の束が締め付けられることにより、そこから先の神経に障害が生じ、痛みや痺れが生じてしまうのです。
さらに、痛みや痺れだけでなく、腕の重怠さや感覚障害、握力低下なども引き起こす可能性があります。

・自律神経症状

神経や血管が圧迫・牽引されることで、交感神経の機能異常である自律神経症状が出現する可能性もあります。下記のような症状が出ると、自律神経障害の可能性が考えられます。
【自律神経障害が考えられる症状】
・手指のうっ血やむくみ
・手の蒼白化
・冷感
・発汗異常
・頭痛
・眩暈、嘔吐

診断

胸郭出口症候群は、整形外科テストやレントゲンなどを用いて診断されます。

・整形外科テスト

整形外科テストは、わざと神経や血管を圧迫したり、圧迫される肢位を取ったりし、痛みや痺れなどの症状が出現するか評価する検査です。
様々な検査がありますが、頸部の筋肉を伸ばしてみたり、押してみたりして、手の痺れの有無を診たり、手首の脈が触れるかを診たりします。

・レントゲン

レントゲンでは、頸椎や肋骨など骨の状態をみます。
骨に変形などがないか、骨の位置不良が起きていないかなどを評価します。

治療方法

胸郭出口症候群の治療方法についてご紹介します。

・生活指導

デスクワークなど仕事の姿勢、重い物を持つことを控えるなど、日々の生活で身体の負担になっている動作を見つけ、改善を図っていきます。

・姿勢の修正

胸郭出口症候群を発症する方の姿勢には、特徴があります。
女性で多い「なで肩」、男性で多い「いかり肩」が特徴的です。

・なで肩

なで肩は、背中が曲がり前傾姿勢で、鎖骨と肩甲骨が下がっているような姿勢です。
治療では、下がっている鎖骨と肩甲骨を上方に引っ張る「僧帽筋」を鍛えていきます。
また、僧帽筋だけでなく、外側に開いた肩甲骨を正しい位置に引き寄せる「菱形筋」も鍛えていきます。
この2つの筋を鍛えることで鎖骨と肩甲骨の位置が改善され、神経の圧迫や牽引が改善できる可能性があります。

・いかり肩

いかり肩は、なで肩と逆で首の筋肉が過剰に緊張し、鎖骨と肩甲骨を上方に引っ張ってしまいます。
特に斜角筋や僧帽筋が硬くなりやすいため、マッサージで緊張を和らげていきます。

・マッサージ・ストレッチ

先ほどの悪い姿勢の原因となっている筋肉や、3つのトンネルを狭めている筋肉に対して、マッサージやストレッチを行い、トンネルを広げていきます。
斜角間隙では斜角筋、肋鎖間隙では鎖骨の下面に存在する鎖骨下筋、小胸筋下間隙では小胸筋を柔らかくする必要があります。

・神経ブロック注射

原因となっている神経に注射を打ち、一時的に神経を休息させて循環の改善を図ります。

・手術

重症で生活に大きな支障をきたす場合に、手術が選択されることがあります。トンネルの絞扼原因となっている骨や筋を切除し、トンネルを広げる手術です。

まとめ

今回は、首から腕にかけての痺れが特徴的な胸郭出口症候群について、詳しくご紹介してきました。
スポーツをしている方や、腕を高く挙げる動作の多い仕事などで発症することが多く、若年者に多い疾患です。「若いから大丈夫だろ」と軽く考えると、生活に支障を来たすほどにまで悪化する恐れがあります。我慢せず早めのうちから接骨院などの医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
焦らずゆっくりと治療していきましょう。

参考文献
工藤 慎太郎 他:運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 p2~p10 2013
糸満 盛憲 他:整形外科学 p427~432 2016
慶友病胸郭出口症候群センター 特別医療法人 慶友会
胸郭出口症候群 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる.

原田 淳 他:胸郭出口症候群に対する治療選択:手術方法と遠隔成績の検討から 脳神経外科ジャーナル 16(2) 121-125 2007